戦前の故銅の規格と買値(1938年,昭和13年) OLD-JIS-of-Copper-Scrap-and-Price

銅スクラップは「故銅(こどう)」とも呼ばれる。

その規格が、大阪毎日新聞の1938年(昭和13年)10月13日付に「故銅の規格と買値」として掲載されている。
なお「商工省」とは、現在の経済産業省。

戦時中に一時「軍需省」に改組されたが、終戦後すぐに「商工省」に復帰し、1949年に「通商産業省」に改組。その後「経済産業省」となり、現在に至る。

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商工省では日本故銅会社と連絡をとり故銅の規格および買値につき研究を進めていたが十二日左の規格表案および格差表案によることに決定した、買受価格は故銅統制会社が指定商より買上げる価格であるが大体市価の半額程度である
なお左の格差表案中価格の明記されていないものは現品を見た上で価格をつけることとなっている

【故銅規格案】
一、一号銅線屑 直径一・三ミリ以上の銅線にして純良なるもの、ただし腐蝕したるもの、焼き過ぎたるものまたは錫引したるものを除く
二、二号銅線屑 直径一・三ミリ未満の銅線(毛髱線を除く)硅銅線または焼白線(直径一・三ミリ以上の錫引線を焼却したるもの)ただし焼き過ぎたるものを除く
三、上古銅 銅板および銅棒の手入せられたる屑または新切屑、ただし焼き過ぎたるもの、垢附のもの、ペイント附のもの、錫引したるもの、ハンダ附のものまたは鉄附のものを除く
四、並古銅 銅板、銅管および銅棒にして垢附のもの、ペイント附のものまたは焼き過ぎたるもの、薄もの(銅屋根板、船張板など)金網、エナメル線、焼白線(直径一・三ミリ未満の錫引線を焼却したるもの、ただし毛髱線を除く)捺染ロールまたは銅鋳物類、ただし錫引したるものハンダづけのものまたは鉄附のものを除く
五、下古銅 風呂釜、湯沸し、鍋その他の古器物類にして錫引したるものまたはハンダづけのもの、毛髱線、錫箔線、電線、□手など、ただしラジエーターまたは真鍮、鉛、■、タール、湯垢などの著しく附着せるものを除く
六、銅、ラジエーター 屑鉄を除去したるもの
七、銅削屑
八、燐青銅、燐銅、丹銅、フレンジおよび製紙用燐青銅網の屑
九、薬莢屑 大中小の薬莢打殻および送弾子ただし信管または鉛附のもの、鉄附のもの、焼き過ぎたるもの、もしくは酸化したるものを除く
一〇、真鍮新屑 新板抜屑、新板管の切端、新真鍮錫断屑なにど(一個の大きさ二十センチ以下重量三十キログラム以下にしてかつ坩堝の鎔解に適するものたることを要す)
一一、上真鍮屑 古板管切屑、ネーバル屑、火延棒、足袋こはぜ、延板より作られたる古器物、ハーモニカ板、時計地板、コンデンサーチューブ等但し錫引したるもの、ハンダ附のもの、鉛附のもの、鉄附のものニッケルメッキ、ペイント附のもの、□真鍮棒または腐蝕したる板管を除く
一二、真鍮タービン□屑 新品切屑、および古屑にしてハンダ、垢または油の附着せざるもの
一三、込真鍮屑 主として薄物の各種雑多の真鍮(錫引したるものまたはニッケルメッキしたるものを含む)ただし時計器機、鉄埃、掃寄グリース等の混入せざるもの
一四、黄口真鍮屑 真鍮、真鍮鋳物(一個の大きさ二十センチ以下重量三十キログラム以下にしてかつ坩堝の鎔解に適するものたることを要す)ただしマンガンもしくはアルミニユームを含有するもの、錫引したるものまたは鉄引したるものを除く
一五、アルミニユーム、青銅およびマンガン青銅の屑 艦船取外しの推進翼、諸機械の部分品などにして銅、亜鉛、錫、アルミニユームまたはマンガンなどの合金鋳物および圧延棒屑など(一個の大きさ二十センチ以下重量三十キログラム以下にしてかつ坩堝の鎔解に適するものたることを要す)ただし鉛鉄泥グリースなどの附着せざるもの
一六、シルジン青銅屑 艦船取外しのベアリングおよびこれに類似のものならびに諸機械の部分品にして銅亜鉛、シリコンなどの合金鋳物(一個の大きさ二十センチ以下重量三十キログラム以下にしてかつ坩堝の鎔解に適するものたることを要す)ただし鉄泥グリースなどの附着せざるもの
一七、雑真鍮屑 各種の鋳物ベル真鍮仏具類その他の雑鋳物(通称台湾真鍮および支那真鍮を含む)ただし鉄を除去したるもの
一八、真鍮ラジエーター 鉄を除去したるもの
一九、真鍮削屑
二〇、特砲金屑 軍艦取外しのバルブベアリングメタル、諸機械の部分品などにして銅、錫、亜鉛の合金鋳物(一個の大きさ三十センチ以下重量三十キログラム以下のものたることを要す)ただし鉄泥垢グリースなどの附着せざるもの
二一、上砲金屑 船舶取外しのバルブベアリングメタル、諸機械の部分品などにして銅、亜鉛、錫の合金鋳物(一個の大きさは坩堝の鎔解に適するものたることを要す)但し鉛を含有するものおよび鉄附のものを除く
二二、普砲金屑 一般諸施設に使用せられたる銅、錫、亜鉛または鉛などの合金鋳物、但しアルミニユーム、マンガンもしくはニッケルの合金鋳物、黄口真鍮または鉄附のものを除く
二三、砲金削屑
二四、唐金屑 銅、鉛の合金にして日本在来の古器物一厘銭鏡など
二五、洋白屑 延地用および鋳物用に区分す
二六、ニッケル青銅屑
二七、銅子児(小)屑 銅品位九十パーセント以上のもの(黄銭を除く)
二八、銅子児(大)屑 銅品位八十七パーセント以上のもの(黄銭を除く)
二九、黄口厘銭屑 黄銭、銅品位五十三パーセント以上のもの
三〇、銅および銅合金のユルミまたは角丁 一切の流し替えたるものを含む
三一、その他前各項に該当せざるもの

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「したるもの」「アルミニユーム」「附着」などに「戦前」を感じる。

戦後の規格については銅及び銅合金リサイクル原料分類基準を参照のこと。

29に「黄口厘銭屑 黄銭」とあるが、現在は貨幣を溶かすと「貨幣損傷等取締法」違反となるので不可。
これは1947年(昭和22年)からの法律だが、上記の規格は1938年(昭和13年)なので、まだこの法は存在していない。
戦争のために、鋳潰すこともあっただろう。

なお、貨幣損傷等取締法では、溶かさずとも損傷させると違反なので、マジック(タバコが貫通するなど)で使うために、現行の日本貨幣を改造するのも違反となる。