金属スクラップ屋の火災 Fire-of-Metal-Scrap-Dealer
割と頻繁に、スクラップ屋での火災がある。
テレビでも報じられ、真っ黒な煙が立ち上る、ヘリからの映像を見たこともあるだろう。
単純な銅屑は銅であるから、まず燃えることはない。
アルミや真鍮、鉄も同様で、燃えることはない。
燃えるのは「雑品(ざっぴん)」と呼ばれる家電屑の類だ。
雑品とは、雑多な家電屑。
テレビやパソコン、プリンターや電子レンジなどの、様々な家電製品入った屑の総称。
内部にはモーターなどが含まれており、わずかな金属が含まれる。
日本国内でこれらの金属を取り出すのは人件費的に合わないので、雑品は中国に輸出される。
以前はスクラップに「雑品」などという品目はなかったのであるが、2000年以降、中国筋が買うようになり、一気に広まった。
家電屑の外装のプラスティック(ABS樹脂など)は、一度火が付くと一気に燃え広がる。
特にテレビのガワは、黒煙となってよく燃えるね。
言葉は悪いが、雑品は、屑業以外の人間から見れば、単なる「ゴミ」である。
そのため、テレビなどの報道では「資材置き場から出火」とか、「ゴミ置き場から出火」などと書かれる。
「雑品置き場から出火」と書いても、一般人には「雑品」の意味が分からないためだ。
まぁ、テレビや一般マスコミは一般人なので、雑品と言っても理解できないだろうが。
燃えるのは分かるが、燃えるためには、まず火が付く(発火)する必要がある。
発火の原因であるが、雑品には何でもかんでも入っているので、いくらでも考えられる。
ガスコンロが入っていれば、着火用の電池(カチカチというアレ)が入っているので、ショートすれば発火。
電池を使うおもちゃが入っていれば、その電池がショートして発火。
バイクがそのまま入っていれば、鉛シールドバッテリーが入っているので、ショートして発火。
バイクの場合は、ガソリンが入っているので、より燃えやすくなる。
このようなものが発火の原因であるが、当然、放火もあり得る。
スクラップ屋、特に雑品を扱うスクラップ屋は郊外にあるため、夜間は人気がない。
そのため、放火される可能性も高いのだ。
高い外壁で囲い侵入を防いでいても、火の付いた何かを投げ込まれれば、全くの無力だ。
雑品の山に火が付くと、よほどの初期でない限り、消火は困難。
それなりの屑屋であれば、一応消火器は用意してあるが、相手は山、消火器は無力。
巨大な山となっているので、消防車が水を掛けたところで、あまり意味がない。
多くの場合、燃え切るまで待つ(自然消火)しかないのだ。
一般の火災と同様、初期消火が重要であり、発火に気付くのが遅れれば手遅れとなる。
だが、発火は営業時間中とは限らず、終業後や休日にも発生しうるものであり、当然、発見が遅れる。
ヤードが遠方であればあるほど、火災の発見は遅くなり、通報も遅れることになる。
山中のヤードであれば、黒い煙がもくもくと上がり、それに気付いた住民からの通報が火災の第一発見であり、その時点で既に手遅れだ。
雑品の火災が相次いだため、雑品を扱う業者はバッテリーや電池、ガスボンベ等の除去を求めているが、単価の安い雑品に、そのような異物を除去する手間は掛けられない。
そのため、何かしらの発火物は入っていると考えるべきだ。
中国行きの船積みの最中に出火したことも、輸送中に(海上で)出火したこともある。
この場合、水を掛けるとその重みで船が沈むため、半ば自然消火に任せるしかない。
ヤードで雑品から出火し火災となると、電線が損傷し、付近が停電となることもある。
また、高速近くのヤードの火災では、煙で通行止めになることもあった。
当局からオシカリを受けるのはもちろんだが、近隣からの冷たい目がしばらくは続くだろう。
港で燃えた場合は、当面の間、出入り禁止?