銅スクラップ屋の重量問題(風袋引,雨引)

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スクラップの重量、たかが1kgと言うなかれ。
1キロ700円の銅屑において、1kgの差は700円に相当する。
持ち込んだ銅屑の重量が1kg少なく計量されると、持ち込んだ側は700円損するのだ。

さて、この重量。
計量器(スケール)で計量するが、正確性はどうなのか?

その前に、スケールの特性を。
車ごと量る「トラックスケール」の場合、表示は10kg単位だ。
これは、そういう仕様なので仕方がない。

多くの場合は「四捨五入的」。
「的」とは何ぞや、と思われるが、完全な四捨五入ではないということ(スケールの制限)。
詳細は数学的なハナシになるので省くが、特に意図がなければ、一般の四捨五入と思って問題ない。
どちらか片方が得ばかりするわけでもなく、損することもあるわけだ。
細かい持込者になると、この四捨五入を利用(略)

だが、これは「特に意図がなければ」に限る。
何かしらの意図があれば、重量の操作は可能。
スケールの値を外部に表示し、客に見えるようにしている業者が多いが、その値は正しい?
この点が気になるなら、他で計量してから持ち込むことだ。

当然、意図せずにズレることもある。
四捨五入の境界上だと、スケールに当たる風により値が変わることもある。
トラックがエンジンを掛けたままだと、振動で値が変わることもある。
トラブルを防ぐために、「計量中はエンジンを切れ」と命ずる屑屋もある。

また、スケール上の雨や雪により、値が変わることもある。
トラックスケールでの計量は、通常2回行い、その差から重量を出す。
ゲリラ豪雨などの突然の雨で、2回目の計量に雨が乗ることもある。
荷降の場合、2回目の計量に雨が乗れば、降ろした屑の正味が減ることになり、降ろした側の損となる。

さらに、スケールの劣化もある。
トラックスケールは消耗品であり、寿命がある。
数十トンものトレーラーやコンテナを量るわけだ、スケールに掛かる力は相当なモノである。

そのため、数年に1回、半日程度をかけ、スケールのチェックと校正を行う。
というよりも、取引に計量器を使う場合は、このチェックと校正が必須なのだ。
それでNGとなれば、係るパーツの交換を行い、問題がないことを確認する。
この点検は、基本的には計量器屋が行う。

点検で問題がなければ、次回のチェックは数年後になるわけだが、点検と点検の間に不良が生じることがある。
この不良は、一見して気付かない。
仮に27t500kgが、27t600kgになっていたとして、その差に気付くかね?

チェックと校正には、当然ながら費用がかかる。
その費用は決して安くないが、これを無駄だとして実施していない業者がないとは言えない。

小さな2トン計りなどでは、1kg単位での計量が可能。
トラックスケールのような10kg単位ではなく、より細かく量ることができる。
だからといって、トラックスケールで量るべき大量の銅屑を、2トン計りで量れというのは、無茶な要望。
それをするのに、屑屋にどれだけの手間がかかるかを考えよう。

風袋(ふうたい)の重量も重要。
風袋とは、簡単に言うと、袋や容器の重さね。

フレコン(フレキシブルコンテナと呼ばれる大きな袋)入りで持ち込んだ場合、その枚数で風袋算出し、重量から引く。
この時、フレコン1枚=○kgと定めている屑屋もある。
多くの場合は3kgであるが、業者によっては、5kgなどとするところも。

仮に、フレコン入りの銅屑(キロ700円)が2袋、袋込みで800kgとする。

フレコンを3kgとする業者の場合、

正味は800kg-(3kg×2枚)=794kg
794kg×700円=555,800円

これがフレコンを5kgとする業者の場合、
正味は800kg-(5kg×2枚)=790kg
790kg×700円=553,000円

となり、実に2,800円もの差が生じる。
2,800円もあれば、相当豪華なメシが食えるね。

フレコンの重量はフレコンの種類によって様々。
中身の銅屑を出してカラになったフレコンを計量すれば正確な風袋重量が出るが、そこまでしない屑屋が一般。
フレコン入りで在庫保管する屑屋の場合、出したら再度入れ直さねばならないからだ。

以上は風袋のハナシだが、他にもある。

雨が降ったらどうするか?

雨の日に屑を持ち込むと、雨で重量が増す。
この場合、屑屋は「雨引き」というものをするが、それは果たして正確な値か?
屑の種類や形状にもよるが、その内部に含まれた「雨量」を正確に求めるのは不可能である。
屑を全て取り出し、乾いたタオルで銅屑から雨を拭き取り、再度計量?
そんなこと、できるはずないね。

屑というものが相手である以上、正確さを突き詰めるには限度がある。
突き詰めると手間が増え、人件費により成り立たなくなる。

屑相手の商売は、ある程度のアバウトさが必要なのだ。

もちろん、納得できる風袋引きや雨引きでなければ、その屑屋に売る必要はない。
他を当たろう。

しかし、荷物を降ろしてから「売らない!」のでは、互いに面倒。
持ち込んだ側は時間を失い、屑屋は時間と人件費が無駄になる。
持ち込む前か、降ろす前に、屑屋とキッチリ話をし、納得したら降ろそう。

持ち込む側もそうだ。
車の鉛電池に水を入れて持ち込むのは問題外。
電解液である希硫酸と区別が付かないと思っているのだろうが。

細かく詰められない業種だからこそ、互いに信用がなければ、長い商売は続かない。